E社の実例
目先の近視眼的経営から中長期的視点の経営へ
〔計画策定への道程〕
E社では、公共工事の減少が顕著になり、これまでの本業だけでは将来の成長が危惧され、新しい分野への進出が緊急の課題になっていました。
リスク等を考えた場合、全く新しい分野への進出よりは、今の経営資源が活用できる本業の延長線上にある分野への進出が好ましいという判断が下され、進出分野が決定されました。
しかし新分野への進出には、人材の育成・確保、軌道に乗るまでの資金繰り対策、新規開拓を中心とする営業体制の強化、技術力、設計力等の計画的スキル向上策等々、綿密な準備が必要であり、中期経営計画の立案・策定の運びとなりました。
〔計画の立案・策定プロセス〕
<ステップ1>自社を取り巻く外部事業環境の分析
- ・国や府の経済政策
- ・業界の動向
- ・市場の規模、成長性、収益性、価格動向
- ・顧客ニーズの動向
- ・競合他社の戦略動向、生産技術動向
<ステップ2>自社の内部資源分析
- ・財務分析(収益性、安全性、生産性の分析)
- ・事業分析(営業力、技術力、品質管理、施工管理、安全管理)
- ・管理体制(人事労務管理、財務管理、購買管理、情報管理、生産管理)
<ステップ3>「SWOT分析」による「強み・弱み」の整理
SWOTとは、強み、弱み、機会、脅威の頭文字をとったもので、<ステップ1>と<ステップ2>の現状分析の結果から、一表にわかり易く整理・記入します。
<ステップ4>経営理念・経営ビジョンの再構築
経営理念は「自社の存在意識」、「経営姿勢」、「行動規範」、を「社是・社訓」としてまとめます。
経営ビジョンは例えば「自社の3年後のありたい姿」を、経営トップが明確に打ち出します。
<ステップ5>事業領域を決める
当社の場合、現市場(本業)の浸透と新市場(新規分野進出)の開拓です。
<ステップ6>全社的な基本戦略の立案・策定
- 全社的な経営課題の抽出・明確化
- 課題解決のための具体的施策の策定
- 実行スケジュールと行動計画の立案
<ステップ7>部門別の基本戦略の立案・設定
- 新規事業開発の組織体制確立
- 部門別経営課題の抽出・明確化
- 課題解決のための具体的施策の立案
- 実行スケジュールと行動計画の立案
<ステップ8>全社経営目標の設定
- 売上高、利益、自己資本率
- 新規事業(事業領域、売上高、利益)
- 社員数、社員一人当たり売上高・利益
- 設備投資額
<ステップ9>全社利益計画の策定
- 損益計画の立案・策定(年度別実行計画)
- 資金計画の立案・策定(年度別実行計画)
<ステップ10>部門別損益計画の立案・策定
- 部門別損益計画の立案・策定(年度別実行計画)
- 部門別資金計画の立案・策定(年度別実行計画)
- 新規事業計画の立案・策定(年度別実行計画)
<ステップ11>進捗管理体制の整備
- 中期経営計画の発表会
- 部門別リーダーの選定と責任体制の確立
- 定期的「計画達成状況報告会」の開催
- 経営トップによるリーダーに対する月次レビューの実施
〔経営計画策定による効果・成果〕
(1)計画策定により、経営トップの経営に対する思いが全社に浸透し、全社的なまとまりがいっそう強化されました。
(2)部門目標と個人目標が明確になり、達成意欲が向上しました。
(3)進捗管理を通じて、それまでの成り行き管理体制から経営管理体制が改善されました。
(4)3年後まで各年度の重点施策が明示され、会社の進むべき方向性が明確になり、社員の経営への参画意欲やヤル気が増進されました。
(5)全社的なコミュニケーション体制が強化され、よりいっそう風通しのよい職場風土が形成されました。
〔当社への支援が成功したポイント〕
①経営トップが経営環境の激変に中にあって、目先の対策・対応にばかり気を取られていると、中長期的に会社の競争力を落とすことになるという危機感をもたれていたこと。
②新規事業進出という重要な戦略決定の時期と重なり、全社員が一致団結して目標にチャレンジするという体制づくりが必要とされていたが、そのためのツールとして中期経営計画の策定は最高のものであった。
③幹部社員を先頭に、この計画案に参加したことにより、経営への参画意識が高まり、組織の活性化が図られた。
④この計画立案により、特に管理職層の人材育成が進み、社内管理体制が格段に強化されていったこと。
⑤定期的な全社ボーリング大会や飲み会を開催し、会社として社員を慰労することも忘れず、主要項目で目標をクリアした場合は海外旅行を約束していること。